中心なき組織は機能しない。
開幕戦、重圧のかかる初打席で外角のボールに逆らわず、レフトへ綺麗に流し打った22歳の高山。2戦目、ボテボテのショートゴロにも関わらず、持ち前の俊足・全力疾走でプロ初安打を掴み取った20歳の横田。
『超変革』
阪神ファンなら誰もが知っている、金本阪神が掲げる今年のスローガン。開幕から2戦を終え、明らかに今年の阪神は違う、今年はやってくれるという何かを感じた。その何かを感じさせてくれる存在は、他でもない高山・横田の1・2番コンビであろう。だが、1年間彼らが躍動するためには、4番を務める福留の存在が鍵になるような気がしてならない。
【中心なき組織は機能しない】
前・楽天監督の野村克也氏が常々口にしていたこのコトバ。プロ野球のチームにおいて、現場の中心は間違いなく「4番打者」、組織の中心は「監督」である。最後にリーグ優勝をした2005年、当時の4番を務めていたのは、現在の組織の中心・金本監督。2005年の成績は、打率327・本塁打40本・打点125という圧倒的な成績であった。
もちろん、成績だけではない。広島入団当初は試合にも使ってもらえなかった苦労人。努力に努力を重ねて掴んだ阪神の4番の座。当時37歳でありながら、若手が多い中での自覚、人気球団の4番という自覚からか、プロ野球シーズンの中で最高の成績を残した。そんな彼が、146試合、全ての試合・全てのイニングで4番に座っていたチームが弱いはずがない。2005年は、2位中日に10ゲームを離して優勝するという他を寄せ付けない1年だった。
【2016年、現場の中心】
2016年の阪神を見渡した時に、その重責を担える存在が誰なのかと見渡してみた。鳥谷・ゴメス・ヘイグと実力者はいるが、成績や実績だけでなく、言動や姿勢、全てを含めてみれば、福留しかいないだろう。
名門・PL学園の4番を務め、日本生命・中日と渡り、米・メジャーリーグへ。華々しい経歴と実績を携え、2013年に阪神に入団。大きな期待を背負った初年度は、打率198、本塁打6本という成績に終わる。背水の陣で挑んだ昨年2015年シーズン、打率281、本塁打20本、打点76という阪神在籍中では最高の成績を残し、この2016年を迎えた。
本塁打の面では少し物足りなかもしれない。だが、歩んできた道のり、練習態度、日常での立ち振る舞いなど、全てを見て金本監督が判断したのだろう。ただ、問題なのは故障1年間フルに戦えるかということ。昨年も140試合に出場したが、途中交代も多く、試合に出ていない時間も多くあった。
39歳で挑むこの2016年。躍動し始めた新戦力が、機能するかどうかの鍵は、4番を務めるこの福留が握っている。彼が大きな故障をすることなく、シーズンを終えられた時には、高山・横田は大きな成績を残し、チャンピオンフラッグは阪神が掴んでいるのではないだろうか。ファンとしてそんな日を夢見ている。