顔に鍼を打つ美容鍼灸に医学的根拠はない。鍼灸師に対して想うこと。
ソフトバンクホークスの柳田選手が、筋力トレーニングをおこないながら、高たんぱく・低糖質・低脂肪の食事を摂っていることに対し、レンジャーズのダルビッシュ投手がTwitterで苦言を呈しました。
それがヤフーニュースに掲載されたり、スポーツ新聞の一面を飾ったりしていましたね。トランプ次期大統領もそうですが、たった一つのツイートでこれだけ世間を賑わせられる「影響力」ってすごいですよね。
こんにちは!大阪市城東区鴫野にある段上はり灸整骨院、野球好き院長の段上 功(だんじょう いさお)です^^
2月から毎日、一記事ずつブログを書いてきましたが、今日で11ヶ月になりました。
野球のことやだんじりのことなど、趣味のことをはじめ、鍼やお灸のことについてもたくさんご紹介してきました。
そうやって発信をすることに対して、何より大切だと思うのは「その発信には責任を持たないといけない」ということ。
SNSでの発信、ホームページでの発信に関わらず、ウソはいけないし、責任の持てないことは言っちゃいけないと思うんです。
当たり前のことですが、この11ヶ月間ずっとそれを意識してきました。
もちろんボクも全く不備がないわけではないでしょうが、ここ最近流れてくる同業者の発信を見ていると、あまりにもヒドイなって思います。
同じ鍼灸師として寂しさえ感じます。
だから今日はあえてそれについて書きたいと思います。
【顔に鍼を打つ美容鍼灸には医学的根拠はない】
タイトルにも書きましたが、顔に打つ美容鍼灸には医学的根拠はありません。
お肌が若返るだとか、アンチエイジングだとか、小顔になるだとか、そんなうたい文句をよく見掛けますが、残念ながら医学的にはまだ解明されていないんです。
美容鍼灸の第一人者といわれる北川毅先生の著書にも、
「鍼の局所における美容的な効果については、現時点では、まだ十分な研究がおこなわれていません。そのため、作用のメカニズムについても、解明されていないことが多いというのが現状です。」
と書かれてあります。
ですが、血色が良くなったり、ピンと張りが出たり、翌日の化粧のノリが良くなったりと、実際に効果は出ます。
ではナゼその変化が出るのか?
これも北川先生の本に書いてありました。
「鍼によって局所に起こる皮膚の修復作用が、美容に対して好ましい効果をもたらしているであろうということが指摘されています。
皮膚の表面に鍼を打つと、表皮や皮下組織にはごく微細な「傷」が出来ます。それを修復しようとする「自己治癒力」により、皮膚のその傷を修復しようとして美容効果が出ると考えられています。」
傷をつけた皮膚を再生しようとし、活性化する。
美容鍼灸だけでなく、鍼灸の治療自体が概ねこういった考え方で症状が改善するとされているので、理論としてはよくわかります。
だから間違っているわけではないんです。
ですが、医学的根拠があると思ってしまうような情報は、一般の人に向けて発信しちゃいけないじゃないかなって思うんです。
顔だけに打ってホルモンバランスが整うとか、カラダ全身の血液の巡りが良くなるなんて誤解を招くようなことも、やっぱり提供しちゃいけないと思います。
【美容は健康なカラダの上にこそ成り立つ】
顔に50本打とうが、100本打とうがホルモンバランスは整いません。
そして、それだけでは健康にもなれません。
顔周辺の血色は少し良くなるかもしれませんが、カラダが冷えて、生理不順もあって、便秘もあるような方が、顔の鍼だけで健康になることが出来るでしょうか。
ボクは決してそうは思いません。
鍼灸の良さは、血液循環を良くしたり、免疫力を高めたり、キモチをリラックスさせたり、カラダの機能を高めたり出来るところにあります。
女性であれば、それにより冷え性や生理痛が和らいだり、生理周期が整ったりするわけです。だからそういったカラダへの鍼灸治療をおこなわないことには、綺麗にはなれないとボクは思っています。
やはり美容は、健康の上にこそ成り立つものだからです。
ただ、カラダ全体に鍼灸をおこなう方がいいのは、鍼灸師なら誰でもわかっていること。でも、それがわかっていてナゼ顔だけに鍼を打つ人が居るのでしょうか。
ボクなりの見解はこうです。
【鍼やお灸を学ぶ場があまりにも少なくなっている】
カラダへの治療をベースにおこない、顔への美容鍼灸をおこなう方が確実に健康に、そして綺麗になれます。
ですがそれをやらない理由は、時間を短縮して費用対効果を上げたいか、カラダのバランスを整える治療が出来ないかのどちらかです。
前者にも思うところはありますが、今回は敢えて後者に関して書きます。
ぶっちゃけますが、鍼・お灸が出来ない鍼灸師が多いです。
それは年々そう感じています。
その最たる理由は、徒弟制度のようなものがなくなったから。
師匠に弟子入りして学ぶということがなくなったんです。
決して悪いことではないですが、学校に居る三年間ずっとコンビニや居酒屋さんでアルバイトをし、卒業後に初めて鍼灸の治療を見る人も居ます。
中にはそんな状態のまま開業する人も居るぐらいです。
ウソじゃないですよ。
そんな人をたくさん見てきました。
実際に行って思いましたが、学校で学べる「技術」はある程度限られているとボクは思います。
座学もしないといけないし、年間の実技の時間数も決まっています。
鍼やお灸を学べる時間は正直言って少ないです。
鍼やお灸に触れる機会、目にする機会があまりにも少ないので、免許を取った時にどういう治療をしていいかわからないんです。
だから、カタくなった筋肉を緩めればいい治療ばかりに走ってしまう。
肩こりや腰痛なんかの治療はそれでも症状が取れるのですが、カラダのバランスを整えるような治療はそうはいきません。
だから宣伝先行型になっちゃうんだと思います。
鍼灸師として免許を持つなら、ちゃんと鍼を打って、ちゃんとお灸をすえましょう。
出来ないならしっかりと学びましょう。
そして出来ないことは言わない、ウソは付かない。
当たり前のことですが、寂しくなるぐらい出来ていないなって感じたのでこんなことを書きました。
昔から間違っていることは、相手が誰であっても黙っていられない性格なんです。
きっとこれを見て反発する鍼灸師の方も、ワケあって反発出来ない鍼灸師の方も居ると思います。
でもね、これが事実です。
間違っていることは、ちゃんと伝えないといけませんから。
長く、熱く語っちゃいましたが、ボクが想うことは以上です。
せっかく鍼灸というマイナーな治療法が世に触れる機会を得たんですから、もっと大切にしましょうね。